SONG OF THE EARTH 311 – FUKUSHIMA 2021 –

REPORT

2022年SOTE311福島前半レポート

2022年SOTE311福島前半レポート

「悲しみから喜びへ」をテーマに5年前から福島県内で開催しているSONG OF THE EARTH 311 -FUKUSHIMA 2022-。ナショナルトレーニングセンター Jヴィレッジを主な会場として、東日本大震災・原子力災害伝承館(以下、伝承館)とも連動し、集いの場を設けることができました。今年は3月10日から3日間にわたり開催、前半の様子をレポートします。

3月10日 キオクツナグミライ、浮かんだ文字

3月10日は伝承館において夕方からCANDLE 11thを開催しました。伝承館は、一昨年オープンした津波と原発事故という人類が経験したことがない複合災害を後世に伝える施設です。建物のテラスからは海をすぐ近くに望むことができる、そんな立地にあります。

夕方、LOVE FOR NIPPONのメンバーを中心に外の芝生広場にキャンドルが並べ始められました。キャンドルは、CANDLE JUNE作のキャンドルと福島県内を中心に各地から集まったメッセージキャンドルのふたつがあります。将来の夢、いま感じていること、灯したい思いを自由に書いていただいています。今回は日本キャンドル協会にも協力いただき、全国各地からも多くのメッセージが集まり、約2,000本のキャンドルを灯しました。

夜が濃くなっていくと、キャンドルの小さな炎がちらちらと輝きを増していきました。たくさんのメッセージキャンドルが形取った文字は「キオクツナグミライ」。無数の願いが空高くのぼっていくようでした。

3月11日 12年目の始まり、ここから一年を

3月11日は音楽や食事やワークショップなど催しを楽しみながら集うお祭り、フェスティバルです。ステージには福島に心を寄せるミュージシャンやパフォーマーが集結、フードコートには福島の名産やLOVE FOR NIPPONとともに長年活動する店も軒を連ねました。屋外会場では凧あげやダルマ引き合戦といった、地域で古くから行われてきた伝統行事もプラス。笑顔が溢れるしかけが満載です。

11日朝。開場の10時前にはすでに来場者の姿がありました。毎年SONG OF THE EARTHを楽しみにしている人、初めて来た人、この日のために休暇を取った人、それぞれの思いで集まってくれています。不思議と3月11日は毎年晴天。今年も早朝から青空が広がりました。

ステージでは、ミュージシャンのみなさんが素晴らしい音楽を次々に届けてくれました。福島への思い、東日本大震災に思いを馳せながら、ときどき言葉を詰まらせながら。その声や音に耳を傾けていると、腹の奥にずっしりとしたなにかが落ちてきます。

14時半。来場者も出演者も全員が屋外の会場へ集まりました。そして、14時46分。サイレンが鳴り1分間の黙祷。日差しは温かいものの、冷たい風が吹いています。そして、こうして冷たさや寒さを感じるたびに思うのです。あの日はもっと寒かっただろう、と。

黙祷を終えて、大空を見上げると大きな凧がいくつも飛んでいました。この凧は広野町の日本最北のバナナの茎を使って作られた特別な和紙でできています。和紙には子どもたちの夢が描かれています。「古くから凧は天国と地を繋ぐものといわれているんです」とは、大凧あげを担う三条凧協会須藤謙一(須藤凧屋)さんの言葉。ほんとうにそんなふうに見えました。

挨拶のなかで「3月11日を休日にしたいんです」と、CANDLE JUNEは来場者にうったえかけます。2011年3月11日に福島でなにがおきたのか、この土地の人たちの経験を礎にしなければSDGsも未来も考えられないのではないかといいます。そして、今日この日、ここからまた一年が始まると決意をあらたにしているようでした。震災から10年が経過し、当時を知らない子どもたちもたくさん増え、多くの人の気持ちにも時間の経過を感じさせます。しかし、決して風化させない、そんな強い思いが伝わってきました。